2015年10月12日月曜日

「失われた時を求めて10」 囚われの女Ⅱ

「失われた時を求めて 10」 第五編 囚われの女Ⅱ
マルセル・プルースト著 鈴木道彦訳 集英社文庫


アルベルチーヌと暮らしていたのはいったいどれほどの時期だったの
でしょうか。
具体的なことはきっと文章の中に組み込まれているとおもうのですが、
それを重要視していないようかのふりをするのが上手なプルースト。


この巻では、ずいぶんと大きなサロンを宴するようになった
ヴェルデュラン夫人のところでの演奏会から始まります。
ここでは故ヴァントゥイユの七重奏曲が披露されます。
第一巻でコンブレーの音楽教師として登場したヴァントゥイユが、
実は素晴らしい作曲家であったことは、
これまでにも明らかになっているのですが、
ここで音楽についての考察が述べられる場面にもなっています。
クラシック音楽を聴く醍醐味は、芸術理解の一例として書かれますが、
私にはわかりにくいのでした。
そのように頭で考えてみたことが無く、
感覚だけで聴いているからでしょう。
複雑なことに、この七重奏曲は、ヴァントゥイユの娘の相手の女性によって、
解読され、公になったようです。
このあたりは伏線がいくつもありますが、
ちょっと無理があるような気がします。
演奏会の後には、シャルリュス男爵を中心におしゃべりに花が咲きます。
シャルリュスの切れ味抜群で、頭ごなしの台詞がまたまた可笑しい。
社交界の場面はいつも可笑しいと思わされます。


後半では再びアルベルチーヌが待つ家で。
アルベルチーヌが“私”を裏切っているのでは、という不安が
常につきまといます。
彼女は“私”を愛してはいないことを心の底ではわかっているからです。
裏切りというのも、男性相手ではないところがミソです。


そして“私”が行動を起こそうとした朝、
アルベルチーヌは旅立ってしまったのです。
この巻はこれで終了。


おわかりかと思いますが、
“私”の自己問答にだいぶ疲れてきたので、
このあたりから読むピッチを上げました。
丁寧に読もうとするとかえって進まないためでした。
つまり“私”の思考回路に付き合うのに慣れてしまい、
違和感が露骨になってきたためでしょう。
逆にこのあたりでも虜になっている人はプルーストを本当に愛していると
思うのです。

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