「サンドリーヌ裁判」 トマス・H・クック著 村松潔訳
ハヤカワ・ポケミス1891
このミステリが称賛されているのを見るにつけ、
読んだ者として、少しは語っておこうかな、と思い直しました。
これは夫婦の物語です。
アメリカの小さな町の大学教授の夫。
同じ大学の同じく教授の妻。
妻がベッドの中で死亡していましたが、
これは自殺なのか?
夫による殺害なのか?
夫が起訴され、裁判が始まります。
裁判を舞台としながら進むミステリです。
夫は不利な状況下にありますが、
裁判中、弁護士と娘とのやりとりを挟みながら、
過去を振り返ります。
妻はあの時、なんと言ったか。
妻はどういうつもりであのような行動をとったのか。
妻の相手の男性とはどういう関係だったのか。
妻と夫は全くの他人。
偶然知り合い、妻は夫を伴侶として選びました。
そして旅に出たのでした。
旅から帰り、二人で勤められる大学を選び、
引っ越し、新たな生活が始まり、娘に恵まれ、
そして時が流れ、妻は重病であることがわかりました。
ああ、だのに夫サミュエルはいったい何をしていたのでしょう。
妻はたくさんのキーワードを残していました。
それは、夫へのメッセージであったのです。
そのことに気付いた夫サミュエルは、始めて己を知ったのです。
すべてが夫サミュエルにとって明らかになり、
裁決が発表されます。
そして、エンディングが訪れます。
ミステリ仕立てではありますが、
夫婦の話として読ませられました。
未だに夫婦というものが理解できない私には、
結末はあまりに愚かしい。
事実は小説より奇なり。
小説としての体裁が複雑で、
読み解く醍醐味もありますし、
心理描写を追っていく興味深さもあります。
もちろん山場もあちらこちらにあり、
冷や汗をかきながら読む人も多いのでは。
ミステリ小説としては満点、
個人的には苦手、という読書でありました。
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