「失われた時を求めて」 13 第七編 見出された時Ⅱ
マルセル・プルースト著 鈴木道彦訳 集英社文庫
この最後の一冊は、“時の流れ”を意識させる描写が
連なっています。“時”をどのように、どんなときに、
どんなふうに意識するものなのか。
“私”はこの“時”を芸術作品として、
書いてゆくことを決心し、それがスケールの大きなものであることを
すでに予測していました。
物語は“時の流れ”つまり“時”はどういうものであるか、
“私”の思考の終着点に向かって結ばれます。
この集英社文庫版には訳者による“はじめに”があり、
前巻で起こったことを振り返り、この巻で起こることを前もって
知らせてくれます。非常にすぐれた解説であり、
私たちは“はじめに”をナビとして物語に入っていくことができます。
そこでは、作者プルーストの意図の考察も取り上げられており、
この小説がいかに壮大なものであるかを知らせてくれるのです。
この小説に出てきた人物たちが、
この巻では新たな立場や様子で登場します。
そしてサン=ルーとジルベルトの間に生まれた娘も登場します。
また、かつての舞台女優ラ・ベルマと、現在有名人となった
ラシェルが比較されるように書かれています。
昔、ラシェルはサン=ルーの恋人でありました。
ヴェルデュラン夫人はゲルマント大公夫人の座に収まっています。
これだけでも、驚かされるわけです。
と同時に、私も話相手との会話で自分が歳をとっていると
理解されていることを知らされます。
プルーストは51歳で亡くなっています。
この大作が書かれた経緯は大変複雑で、
現在も研究が進んでいるようです。
物語を読むということは終了しましたが、
解説の本を読むことで、この本の気が付かなかった魅力や、醍醐味、
書かれた経緯を読み解く面白さも知ることができるでしょう。
色々な意味で、終わらない物語、そういう印象が最も強く残っています。
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