「現代小説クロニクル 1980-1984」
野間宏 泥海
藤枝静男 みな生きもの みな死にもの
吉行淳之介 菓子祭
吉村昭 鯊釣り
増田みず子 独身病
坂上弘 杞憂夢
島尾敏雄 湾内の入江で
大江健三郎 泳ぐ男 水のなかの「雨の木」
澁澤龍彦 きらら姫
1980年代、高度成長期がピークを迎え、
その反面、公害や社会問題が、大きく取り上げられるようになった時代。
現代病というのも聞かれるようになったのもこの頃でしょうか。
執筆陣をみると、
文壇で書き続けている作家がいて、
戦後を生き続けている作家がいて、
現代的なスタイルを掲げる作家がいて、
混沌としています。
文壇というのもこのあたりで最後の世代になるかもしれません。
つまり、大作家の弟子や、同人誌から出発して書いている作家たち。
現在の文学界とはまた違った経緯を辿っています。
そういったことも関係するのかもしれませんが、
各作家の使命感が強いという感じもします。
自分の内面深く降り、自分の使命を意識しながら書いている、
そんな風にも思われる、重い作品が多かった。
世間は、経済面では明るいはずだった時代に、
なぜこれだけ重く、苦しい作品が多かったのでしょうか。
私自身は、この時代は学生でしたが、
上記のような作家たちの作品は大人が読むものだという意識がありました。
全く共有できるものが無かったのです。
今、初めて読んでみても、時代性の違いを強く感じます。
世代の問題もあるでしょう。
いずれも作品としては申し分ないのですが、
違和感だけが残る読書となりました。
私にはめずらしい読書体験です。
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