2015年9月6日日曜日

「現代小説クロニクル1990-1994」

「現代小説クロニクル 1990-1994」 講談社文芸文庫


大庭みな子 フィヨルドの鯨
鷺沢萠 ティーンエイジ・サマー
山田詠美 晩年の子供
安岡章太郎 夕陽の河岸
石牟礼道子 七夕
後藤明生 十七枚の写真
古山高麗夫 セミの記憶
多和田葉子 光とゼラチンのライプチッヒ
中沢けい 犬を焼く
笙野頼子 タイムスリップ・コンビナート


取り上げれている作家たちの名前をみると、
年配の方から若手まで幅広いことに驚きを感じます。
1990年代始めはそういう方が入り混じっているということを、
読むとなおさら感じさせられます。


若手の書き手は瑞々さのあふれる筆致で、
かつてのルールの従わないオリジナリティのある手法で
書き始めているという感があります。


安岡さんたち年長の方々は、
昭和の物語であり、戦後の日本の気配が漂います。
昨今の小説に慣れた人には、
少々固めで、古風でもあります。


そういった時代性を感じ取ることができる趣向のシリーズですが、
読み比べるとなおさら面白いのではないかと思われます。


もちろん良品と出会える楽しみもあります。
私はこの本では大庭みな子さんの作品が、
とてもよかった。


年配のカナダ人の女性が、一人で本を作っている、
というお話で、落ち着きがあり、
フィヨルドの気配を十分に味あわせてくれ、
鯨がアクセントとなっている、リアリティもあり、品のある、
一作でした。


詳しい解説が巻末にあり、
小説家と作品について、未知であっても親しむことのできる、
たいへん優れたシリーズだと思われます。


次はどの年代を読んでみようかな・・・という気持ちになります。

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