「河合隼雄自伝」 河合隼雄著 新潮文庫
2007年に逝去された河合さんですが、
文化庁長官もなされていた方ですから、
大変よく知られておられているかと思われます。
ユングの研究家、箱庭療法の心理学者として、
著書も多く、講演やメディアを通しても知られた方でした。
そんな河合さんは、どんな人生を歩んでおられたのでしょうか。
この本をそういう気持ちで読んでみたのですが、
ご家族が大変仲が良く、
ユニークで実践派、はっきりしたご意見をお持ちでいらしたようです。
基本的にこのご家族に囲まれて育ち、
学生時の戦時中もいつも近くにご兄弟がいらして、
力になっておられたようです。
京都大学を卒業して、奈良の高校の教師でおられたころから、
どんどんと、心理学の世界に入っていかれます。
ロールシャッハについては、このころにかなりの勉強をされて、
テストを繰り返しておられたようです。
心理学を勉強されている方は、人間に関心がある方が多いようです。
つまり、心理=人に興味があるのですね。
河合さんは高校の教師をしながら、
京都大学の院に籍を置き、心理学の勉強を進められていました。
このころの心理学が学問として、臨床の場として、
どのように進んでいったのか、タイムリーに体験されています。
それから、アメリカ留学。
アメリカの教授に進められて、スイスのユング研究所への留学。
そもそもとびっきり優秀な頭脳の持ち主ですから、
行動力と努力があれば、どんどんと前に進んでいかれるのです。
その上、楽しい方ですから、人にも愛される。
この本を読んでいて、雲の上の話だなぁと、つくづく感じました。
心理学ではなく、精神医学になりますが、中井久夫さんという
先生がいらっしゃいます。
この方も、学生の頃から素晴らしい能力を発揮されています。
お医者さんをしながら、ヴァレリーやカヴァフィスの翻訳も
されているという・・・この方も雲の上の方です。
河合さんの自伝はとても参考になるとは言い難いのですが、
時代背景も違うのでもっともな話ですが、
関心のあるジャンルなので、とても興味深く読んだのです。
これほどの方がたくさん社会に存在したら、
社会も変わるのだろうな、と思ったりしながら。
人生を豊かにしてくれる、そんな自伝という形の本です。
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