「自分のなかに歴史を読む」 阿部謹也著 ちくま文庫
昨日は、哲学者 木田元さんの本。
今日は、歴史学者 阿部謹也さんの本と、
難し目の自伝が続きます。
正しくは阿部謹也さんの自伝は新潮社から出ており、
生涯についてはそちらで知ることができます。
早く文庫になってくれないかな。
さて、この「自分のなかに歴史を読む」も、
若い人向けに書かれたご自身の研究の道についての本です。
ヨーロッパについて関心を持たれた直接のきっかけは、
中学生の時にお世話になったカトリックの修道院となりそうです。
カトリック信者に囲まれての生活は、若い阿部さんにとても
刺激を与え、それが根底にあったように思われます。
一橋大学での良き恩師との出会いも、心に残ります。
そこで、「それをやらなければ、生きてゆけないというテーマ」
について研究をするべきだと、学ぶのです。
そこで、阿部さんはキリスト教を知るために、
ドイツ騎士修道会研究を卒業論文のテーマに選ぶことになります。
もちろんラテン語、ドイツ語も勉強され、
その道を進んでいかれます。
大学院を終了後、小樽商科大学へ渡られます。
そこで、学生時代から文通をしていた西ドイツ・ボン大学の教授に
進められ、留学をすることに。
実現するまではなかなか大変だったようです。
ドイツへ留学し、研究を続けられ、多くを学ばれたのでした。
家族との生活のなかで、ドイツの人の接しかたを知り、
ヨーロッパと日本を対角線上に置き、考えていかれます。
ドイツを知ることで、ヨーロッパ社会を知り、日本と比較し、
日本を知る。
ドイツにて古文書を読むことを続けていたある日、
ハーメルンの笛吹伝説を知ることになります。
そこで、阿部さんは推測を立て、改めて研究を始められます。
ヨーロッパはキリスト教社会ではありますが、
もちろんキリスト教が布教される前の信仰もあったり、
習慣があったりします。
とくにそれらが入り混じっていた中世ヨーロッパを中心に、
研究し続け、社会がどのように成り立っていったのか、
考察を述べられています。
後半はそのあたりを優しく書かれていますが、
内容は難しいことです。
読んでいて感じることは、
非常に柔軟性のある思考をされるということです。
一つの事柄から、多くの読み、発想をされています。
研究とはそういうものなのでしょう。
ここでも、阿部謹也という人の個性が光ります。
ハーメルンの笛吹男の本はベストセラーとなり、
私も耳にはしていました。
ようやく、この阿部さんの著書を読んで、
ハーメルンに突撃してみたい、と思うようになりました。
ヨーロッパ社会についての考察も、わかるのものなら、読んでみたい。
まだ阿部さんの本が手に入るうちに、読み始めなければいけません。
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