2014年7月20日日曜日

「失われた時を求めて」第8巻 

「失われた時を求めて」第8巻 “ソドムとゴモラⅡ”
マルセル・プルースト著 鈴木道彦訳 集英社文庫


第7巻の後半でバルベックへ出かけた主人公。
アルベルチーヌとせっせと逢瀬を重ねて、
母を悲しませていました。
その流れでバルベック滞在の模様がこの巻でも引き続き描かれます。


場所は地元の名士カンブルメール侯爵の別荘、ラ・エスプリーエール荘。
借り手はヴェルデュラン夫妻。
ん?貴族の別荘を借りるほどの立場になったのか、ヴェルデュラン。
スワンとオデットが出会ったのはヴェルデュラン夫妻のサロンでしたね。
そこへ出かけるには軽便電車で、こちらもどのような電車であったか、面白いところ。
この別荘と軽便がこの本の大きな舞台となります。
なにしろシャルリュス男爵とヴァイオリンニストのモレルが主役です。


シャルリュスの実態がこの本であきらかになります。
モレルはヴァイオリンが上手であることと美男子であることだけが美点の、
ひどい人間です。
そんな男に惚れてしまったシャルリュス男爵、哀れです。


ヴェルデュラン夫妻が少しずつ社交界で力をつけていっていることから、
社交界の構図が少しずつ変わってきていることがわかります。
以前であれば、シャルリュス男爵もここには来ることはなかったでしょう。


そして主人公“私”は傍らで彼らを観察し、
晩餐会に出入りする人々を眺めつつ、
シニカルにかたり続けます。
この巻はとても“私”は饒舌で、活動的です。


アルベルチーヌに対する気持ちも次の巻への布石となっていますが、
正直に告白すると、あまりよくわからないです。
この気持ちの揺らぎがこの小説の醍醐味でもあるわけですが、
アルベルチーヌに関しては、気持ちの動きが矛盾を多くはらんでいて、
ついていけないのでした。
デリケートな“私”とはお友達になれませんね。


単純に言えば、恋愛に関してはさっぱりわからないのです。
男性側の気持ちともなれば、ますますです。
そのため読書の上でも色々と支障があります。


さて、この巻では避暑地における一つの社交界のパターンが見られ、
人間の可笑しみを笑う余裕があればいいですし、
哀れむ気持も十分堪能できるでしょう。


で、主人公“私”は何をしているのでしょうか?
人間観察と恋愛だけが、避暑地の用事でしょうか。
最近、“私”のことが気になってきました。
この本の主題は“私”が知覚する人間社会と時の流れと思って読んでいるのですが、
だいぶ経つのに、まだ基本軸がぼんやりとしていて、
読むのが難しいところです。
残り5冊。
どのように物語は展開していくのでしょうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿