「めぐりくる夏の日に」 河島英昭著 岩波書店
「イタリアをめぐる旅想」で河島さんと出会ったものの、
河島さんについてほとんど知らないままでした。
どうしてイタリア文学と巡り合ったのか、
どうやって河島さんのストイックなスタイルが出来上がったのか、
どうしたら洞察力を持って秘密に辿り着くことができるのか、
疑問を持ちつつも、これは
謎めいたまま置いておく方がよいのだろうと思っていました。
思いがけなく、日経新聞夕刊に連載されているプロムナードに
河島さんが執筆されて、他のエッセイとまとまって一冊の本になったのが、
この本です。
初めて知った河島さんのルーツともいえる、
大森での幼少期、
北上川のほとりでの疎開時代の印象的な出来事。
いくつかのエピソードを辿るうち、
幼い時より深く考えをめぐらせる人であったことが察せられます。
深い思考力のある人が戦争時をどのように過ごしていたのか、
戦争を知らない世代には、想像を絶するものがあると思われます。
戦争を体験したということと、
疎開によって、異文化ともいえる環境で過ごしたことが、
河島さんを読み解くの鍵のいくつかであるように思えます。
あまり知られていなかった事実として、
戦時中のイタリアにおけるユダヤ系知識人たちは
どのように生きたか。
でも謎はまだ残っています。
イタリアの豊かさを知ったきっかけはどこにあるのでしょうか。
河島さんとイタリアとの結びつきによって、
読者はより豊穣な文化と接することができるのです。
惰性と自己愛による言い訳を述べるより、
手元にあるこの2冊をしっかり読み解くことが必要でしょう。
「イタリア・ユダヤ人の風景」も落ち着いて広げてみることにします。
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