ヘンリー・ジェイムズを読む醍醐味は、
一つ一つの場面、一言一言の会話に潜む意味を
考えながら読み進めるところにあるでしょう。
漠然と読んでしまうと、
何を書いているのか迷宮入りになってしまいますが、
注意を払っていると、
わからずにいたことがさりげなく記してあったり、
人間関係についても配置を頭に入れておくことで、
それぞれが持つ重要性が判明したりします。
ジェイムズ後期の三大作品、
「鳩の翼」「金色の盃」に続いて、
ようやくこの「大使たち」にたどり着きましたが、
この作品が一番楽しく読めました。
それは、たぶん「鳩の翼」は悲しみを避けられず、
「金色の盃」は人間関係の複雑さに納得できなかったことも含め、
「大使たち」は喜びと決断が重要な鍵となっているからだと
考えています。
簡単に言ってしまえば、前向きな要素が基本だからでしょうか。
登場人物は、主人公ストレザーを始め、
老若男女、魅力的な人物が周りを行き来します。
意味ありげな会話も大切なポイントです。
こういったカーブやスライダーなど変化球で
会話が成り立つことが、直接的な現代人からみると、
思わせぶりで、興味深いところです。
小説の持つ多大な要素を十分に持ち、
巧みに話しを組み立て、
味わいのある内容に仕立ててあるこの作品は
小説好きの多くの人と楽しみを分かち合えるように思います。
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