2009年8月26日水曜日

「大使たち」

「大使たち」 ヘンリー・ジェイムズ著 青木次生訳 岩波文庫

ヘンリー・ジェイムズを読む醍醐味は、
一つ一つの場面、一言一言の会話に潜む意味を
考えながら読み進めるところにあるでしょう。
漠然と読んでしまうと、
何を書いているのか迷宮入りになってしまいますが、
注意を払っていると、
わからずにいたことがさりげなく記してあったり、
人間関係についても配置を頭に入れておくことで、
それぞれが持つ重要性が判明したりします。

ジェイムズ後期の三大作品、
「鳩の翼」「金色の盃」に続いて、
ようやくこの「大使たち」にたどり着きましたが、
この作品が一番楽しく読めました。
それは、たぶん「鳩の翼」は悲しみを避けられず、
「金色の盃」は人間関係の複雑さに納得できなかったことも含め、
「大使たち」は喜びと決断が重要な鍵となっているからだと
考えています。
簡単に言ってしまえば、前向きな要素が基本だからでしょうか。

登場人物は、主人公ストレザーを始め、
老若男女、魅力的な人物が周りを行き来します。
意味ありげな会話も大切なポイントです。
こういったカーブやスライダーなど変化球で
会話が成り立つことが、直接的な現代人からみると、
思わせぶりで、興味深いところです。

小説の持つ多大な要素を十分に持ち、
巧みに話しを組み立て、
味わいのある内容に仕立ててあるこの作品は
小説好きの多くの人と楽しみを分かち合えるように思います。

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