2012年1月22日日曜日

「スワン家の方へⅡ」読み終えました


「失われた時を求めて」第2巻
「スワン家の方へⅡ」 マルセル・プルースト著 鈴木道彦訳 集英社文庫

第1巻では語り手が幼少時にコンブレーを訪れたときのことを回想していました。
第2巻ではコンブレーの祖父の家を度々訪ねてきていたスワン氏が主役となっています。
スワン氏がまだ少し若く、オデット・ド・クレシーに恋をする「スワンの恋」。

ブルジョワのヴェルデュラン家のサロンを中心として話は巡り、
スワン氏がそのサロンで歓待されていた時には、
恋も順調だったようですが、
少しずつヴェルデュラン夫妻との関係も複雑になり、
オデットはいかにもどっちつかずに上手に振る舞います。

オデットの真意はどこにあったのでしょう。
常に金銭的には困っていて、スワンを当てにしているようなのです。

この417ページに渡って、スワンは恋に悶々とするばかりです。
胸に覚えのある人はようくわかりますね。
答えなどあるわけないのに、彼女のことばかり考えているのです。
そんなある夜サン=トゥーヴェルト侯爵夫人邸の夜会に出かけ、
ヴァントィユ(第1巻で登場していた作曲家ですね)の楽曲を聴き入っているうちに、
オデットの心が離れてしまったことを悟るのでした。
そういいながらも、二人の関係がすっかり終わるわけではなく、
オデットの面影を追い続けているスワン。
本当は俺の趣味ではないと悔いながら。

さて、舞台はここで変わります。
タイトルも「土地の名・名」。
語り手は第1巻と同じ人ですが、1巻のときよりも成長しています。
この「土地の名」をめぐる夢想は大変美しいものです。
私たちもなんらかの憧れを持っている土地の名を耳にするとき、
胸が膨らんで、心が震えてきたりしますね。
この章は自分の気持ちを言葉に置き換えてもらっているようで、
うっとりとしてしまいました。

最後にもう一つ大切なシーンが出てきます。
スワン夫妻の娘ジルベルトとシャンゼリゼで遊ぶようになったのです。
スワンがオデットと結婚して、ジルベルトが生まれています。
語り手はスワン氏をジルベルトの父として、
オデットを母としてまた美しい人の代表として崇めています。
オデットを一人の女性として眺め、
それからずっとのちになって、
そんな女性が淑やかにブーローニュの森を散歩していた時代を、
懐かしく振り返ってこの章は幕を閉じるのでした。

“あるイメージの追憶とは、ある瞬間を惜しむ心にすぎない。
 そして家や道や、通りは、逃れて消えてしまうのだ。
 ああ、ちょうど歳月のように”

プルーストの小説はこのようにイメージが大変美しい文章となっています。
その言葉が表すイメージを再起動して自分のイメージを作り出すのも、
ひとつの楽しみではないでしょうか。

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