2012年11月21日水曜日

「高慢と偏見、そして殺人」


「高慢と偏見、そして殺人」 P.D.ジェイムズ著 羽田詩津子訳 ハヤカワ・ポケット・ミステリ

今から200年前のイギリスの田園を舞台に描かれた、
ジェイン・オースティンの代表作「高慢と偏見」。
中流家庭の5人姉妹の上から2番目のエリザベスと、
地方を代表する上流階級の紳士ダーシーとの恋愛を描いた作品です。
現代に置き換えても決して古びない人間性が豊かに表され、
多くの人々に愛されてきたといってよいでしょう。

その多くのファンを持つ作品の続編に、
ベテラン・ミステリ作家のP.D.ジェイムズが挑みました。
もともとの作品の続編は他にも書かれており、
つまりエリザベスとダーシーのその後はどうなっただろうと、
想像を膨らませさせる題材でもあるわけです。

というわけで、どきどき、わくわく、で読みだしました。
現代物を書いてきたP.D.ジェイムズですが、
時代物もなんなくとクリアです。
そして肝心なエリザベスとダーシー、彼らの周辺の人々も、
原典にのっとって描かれており、ひと安心。
それぞれの役割もぴったりはまっています。

今回はそれに加え、殺人が起こるわけです。
これもなかなかの配役で、お得意の複雑な人間関係を生かして、
書き込んであります。

1800年当時のイギリスの刑事裁判の様子も、
わかりやすく取り上げられて、
明るくない人間にもそのあたり適当に読むことができました。
事件そのものの謎と、ウィッカムの裁判。
このあたりはP.D.ジェイムズの上手さでしょう、
おおっと言わせる展開が山場を作ります。

ベースはほとんどオースティンの表現、登場人物の人間性が
そのままに活かされているので、
全く違和感なく読むことができました。

ミステリとしても面白く、
現場にかかわる人々の心理もいつものP.Dジェイムズらしく、
深く掘り下げて書かれていますから、
続編としてはとっても面白い内容となっています。

中心人物なので仕方がないのでしょうが、
寡黙なはずのダーシーがよく会話をするシーンが出てきます。
肝心なところではダーシーも話すのか・・・と思ったり。

オースティンのお得意の人にありがちな俗っぽさを笑う部分も
ちょこちょこと出てきて、失笑にも事欠きません。

総合的には、
オースティンのファンでイギリスのミステリが大好きな人には、
とっても楽しい?読書となるのではないでしょうか。

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