2012年5月5日土曜日

「魔法使いクラブ」



「魔法使いクラブ」 青山七恵著 幻冬舎文庫

著者の青山さんは1983年生まれと大変若い作家です。
以前に「ひとり日和」を読んで、物語作家として注目しています。
そんなに本を買えない貧乏人なので、文庫になった作品を
読んでいくことにしています。

さて、この「魔法使いクラブ」は結仁(ゆに)という女の子のお話です。
第一章では結仁の小学校4年生時代がリアルタイムで描かれています。
思い返すに、結仁と過去の自分とは全くちがうタイプなのですが、
不思議と結仁の心理にすうっと入っていき、
結仁の目で周りを見ている自分がいます。
ここがまず書き手の腕の技だと思われます。
気持ちの一瞬の揺れをきらりと鮮やかに切り取っているのでした。

まずこの4年生の時代をしっかり書き込むことで、
友達関係、学校での様子、あこがれの男の子の存在、
家族についてベースが築かれています。
さて、この先どう成長していくのでしょう。

第二章では中学2年生の結仁の姿が見えます。
小4のときの延長線上にあることには違いなく、
大きな変化はないのに、でもしっかり中学生の冷めた感覚が感じられます。
ここで友達関係に大きな変化があるのでした。
それにも違和感もなく受け入れている読者の自分がいました。

第三章では劇的な変化を遂げた高校生の結仁がいます。
どうしてこんなことになっているのか、驚かされるのですが、
少しずつ説明がされていきます。
そしてその結果、新たな転換を迎えるのです。

と、内容をかいつまんで書いてみましたが、あまり必要ありません。
筋そのものも読ませるのですが、
青山さんの作品は作品全体の仕上がりのバランスがとてもよく、
もちろん表現者としての技も巧みです。
過去に女の子だった方、一度読んでみてください。
ある結仁という女の子の少女時代を辿ることで、
新しい価値観を見出すことができるでしょう。

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