2012年5月27日日曜日

「振り子で言葉を探るように」



「振り子で言葉を探るように」 堀江敏幸著 毎日新聞社

この書評集について簡単にお話するのはとても無理です。
読んだことがある本や作家についてはもちろん、
以前から関心のある本や作家についてとなると、
読み手側にも言いたいことがむくむく湧いてきて、
じっとしていられなくなるのです。

庄野潤三、日野啓三、須賀敦子、岩坂恵子、池澤夏樹、
小川洋子、水村美苗、大竹昭子、小野正嗣、朝吹真理子、
神西清、小沼丹、山田稔、クロード・シモン、M・ビュトール、
ロジェ・グルニエ、ジャック・レダ、ル・クレジオ、フロランス・ドゥレ、
ジョルジュ・シムノン、S・ミルハウザー、W・G・ゼーバルト、
ペーター・ハントケ、ズヴェーヴォ、ウリツカヤ、モラレス、
清岡卓行、多田智満子、チェーホフ、ブルガーゴフ、ペソア、
ヴァレリー・ラルボー、野崎歓、出口裕弘、湯川豊、菅野昭正、
A・タブッキ、岡田温司、林洋子、ブラッサイ、白洲正子、
小沼純一、辻佐保子、A・A・ミルン、三宅徳嘉、港千尋、
冨原眞弓、陣野俊史、鷲田清一、清水徹・・・
書き手を取り上げてもこのとおり、
この人々をめぐる個々の逸話から、その人生、
書かれた書物について、頷くこと、考えさせられること、
見出されること、この本からささやき声が聞こえます。

とはいえ、表面的にしか理解できていない不安を持ちつつ、
落ち着きもなく、感覚だけの読書しかしない人間にとって、
堀江さんは言葉の泉のような役目を果たしてくれます。
それはタイトルにもあるように、
「振り子」によって水のありかを探りあてる人にだけ描ける、
水脈の地図のようなものです。
緩やかなくくりでまとめられた数多くの本たちは、
堀江さんの言葉によって新たに生きる意味を持つのでした。

あいかわらず詩集は苦手だけれど、
大切な言葉たちが招く世界は感じられるので、
それだけでも十分として。

堀江さんの言わんとするのは、本から滲み出る
書き手の愛情や世界観だけにとどまらず、
新たな読み方や、解釈への広いアプローチが
可能だということだと考えられるのですが、
その上に堀江さんの独自の表現手法に共感できる人には、
たまらない一冊です。
これからまたページをめくる楽しみが増えていくのです。

この本は、
この先、何回も取り出して、読み返す一冊となるでしょう。

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