2012年8月16日木曜日

「オオバン・クラブ物語」


「オオバン・クラブ物語」 アーサー・ランサム著 神宮輝夫訳 岩波少年文庫

このお話はイギリス・ノーフォーク湖沼地方を舞台に、
ドロシアとディックたちが繰り広げるドラマです。

ドロシアとディック、知人のミセス・バラブルのお船で休暇を過ごすために、
はるばる遠くまでやってきました。
彼らはセーリングのノウハウを勉強できると思っていたのです。

ドロシアたちの話と並行して、地元の人々が多数登場して、
オオバン・クラブと称した野鳥保護の活動や、
もちろんお船と川との生活などが描かれます。
冒頭ですでに地元の少年トムとの出会いがありますが、
このトムが実質このお話の主人公です。

いつもは分別のある大人たちに見守らている彼らですが、
今回は思わね敵が現れて、トムたちを困らせます。

帆走にかかわる事件に加え、敵とのやりとりも、
このお話の主軸になります。
とはいえ、
ディックは野鳥の観察を楽しんでいますし、
トムからも生態を教えられたり、
ドロシアはせっせと物語を作り上げていきます。
ミセス・バラブルもさっぱりとしたとっても素敵なご婦人です。
それにくわえ、ウィリアムがいいアクセント。
ウィリアム・・・パグ犬です。可笑しすぎます。

この本は全集では「オオバン・クラブの無法者」というタイトルで、
訳も岩田欣三によるものでした。
子供のときはもっとお話の中にどっぷりつかって、
ハラハラ、ドキドキしたものですが、
妙に年をとって冷静に読んでしまいました。

双子の女の子、ポートとスターボードが、
どっちがどっちかわからなくなったりして、はたと気がついたのですが、
アーサー・ランサムの小説では人物の視覚描写があまりないのです。
なので、人物の動きはわかるけれど、
今回のように初めての登場人物が数多くなると、
似顔絵でも描きたくなってきます。
しっかり人物の特徴などを捉えながら読んでいかないと、
面白みが半減してしまうでしょう。

夏休みの読書にぴったり、
アーサー・ランサムはいつも子供たちの味方ですね。

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