2012年9月2日日曜日

「プルーストを読む」


「プルーストを読む」 鈴木道彦著 集英社新書

この本の副題は“『失われた時を求めて』の世界”とあります。
内容は目次を挙げてみてみましょう。

第一章 プルーストの位置
第二章 虚構の自伝
第三章 初めにコンブレーありき
第四章 憧れのゲルマント公爵夫人または想像力と知覚
第五章 フォーブル・サン=ジェルマン
第六章 社交界とスノブたち
第七章 スワンまたは世紀末のユダヤ人
第八章 シャルリュス男爵または孤高の倒錯者
第九章 アルベルチーヌまたは不可能な愛
第十章 芸術の創造と魂の交流
終章 読書について

目次に目をとおしていただくと、すっかりお分かりかと思います。
プルーストの研究者にして、訳者がプルーストを未読である人にも
わかりやすく、この作品についてすっかりポイントを絞って、
解説されているのです。

第七章くらいまでは、これまでの読書を通じて、
“あのことを指しているのだなぁ”と思い出されますし、
プルーストの懇切丁寧な筆致からも、
思わせぶりだったことを察知することができます。

この目次に挙げられることは、其々が独立しているわけではなく、
この本全体に通底していることなので、
大きく取り上げてもこれだけのテーマが盛り込まれているというわけです。
それだけに読むことが難しくもあり、読み応えがあるともいえるでしょう。

プルーストの生きた19世紀末から20世紀初頭のパリを中心に書かれた
作品ですから、この時代に馴染めない人もおられるかもしれません。
しかし、この作品を読めばわかるのですが、
少なくとも人間を描くことと、芸術の在り方や社会の在り様については、
これほど普遍性を含んだ大作はなかなかお目にかかることはできないと、
現代に生きる私も圧倒されながらページを繰っています。

筋が逸れてしまいましたが、この鈴木さんの本は、
単なる入門編には終わっていません。
その普遍性がいかに描かれているかを説明されています。
ちょっとした手品のように上手く表現されているので、
これはこの「プルーストを読む」を読んでいただいて、
プルーストを読むことの充実性が、読書そのものに直結していることを、
知ることができるでしょう。

このような良い手引きの本があるからこそ、なおさら読書が楽しみになります。
難しい批評や解読はプロにお願いしているようなものです。

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