2013年1月20日日曜日

「エクソフォニー」

「エクソフォニー」 多和田葉子著 岩波現代文庫

この本には副題として“母語の外へ出る旅”とあります。
単行本が出たときには、その副題を見て、
難しそうな印象を受けたのですが、
読み始めてみると、言語や文学等に関しての素人でも十分楽しめる内容でした。
多和田さんはそのあたりも考慮されていたのだと思います。

第一部は“ダカール”に始まり、“ベルリン”、“ロサンジェルス”と、
世界中へ訪れたときの経験をもとに、言語について考えられた内容となっています。
出会った人から思いがけない言葉をかけられたり、
アイデアをもらったり、演劇やワークショップで経験されたことがきっかけとなり、
どんどんと考えが膨らんでいく様子は、
多和田さんの小説と似た様相です。
どこへ行くのかわからない、それは読み手次第といった風。

小説家としての活動が幅広いことにも驚かされます。
世界では様々なアイデアが実現しているのだと、頼もしく感じられます。
それは小説家以外にも、文学や芸術の世界に影響を与えるだけでなく、
ほんとうのグローバルな世界が広がっていく現実の姿があるのでした。

第二部では“ドイツ語の冒険”と題して、
ドイツ語と日本語両方で小説を書くことから発見される、
言葉の面白さが具体的に書かれています。
単純に言葉遊びとして読んでも面白いです。

ドイツ語の特徴として、言葉と言葉がくっついて、別の意味の言葉になるという話。
昔、知人のBちゃんがドイツ語を勉強していたとき、「おかしな言葉があるよ」と
話していたことを思い出しました。
そういえば、ケストナーやミヒャエル・エンデをよく読んでいたころ、固有名詞の音に
特徴があって、あまりロマンティックじゃないなぁなどと思ったものでした。

どの言語をとっても母語は初めに身に着けた言葉だから、身体に馴染んで離れない。
後に知った言語は人によって理由が様々で、どのように身に着けるか人によって
違うような気がします。その人自身の中でそれらの言葉が融合して、思いがけない
発想が生まれてきたりする。そういうケースが多和田さんのような気がするのでした。

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