2013年4月21日日曜日

「失われた時を求めて 6」“ゲルマント家の方へⅡ”


この巻は、前巻末尾で生命が危ぶまれた祖母を看取るシーンから始まります。
苦しむ祖母をとりまきながら、出入りする人々。
非情なまでの描写によって、最も愛する人の一人である祖母の臨終を、
書き込んでいるような気がしてなりません。

その後に続くのはバルベックで知り合った少女アルベルチーヌの訪問です。
すっかり女性らしくなっている彼女は、とても親密な様子を見せます。
このシーンはわずかですが、今後の布石となるのでしょう。

そして憧れのステルマリア夫人との晩餐を振られ、悲しむ“私”を慰める
友人サン=ルーの登場。
ここでサン=ルーがどのようにゲルマント的かその優美さ、尊大さ、
それは何故、どのようにか、分析されています。

サン=ルーによってゲルマント的であることの重要さをほのめかされてから、
この巻の中心となるゲルマント侯爵の晩餐会が開催され多くのページが
割かれています。
招かれた人々の紹介から、その人のエピソード、その性格などが、
長々と続き、ゲルマント侯爵、その夫人の社交界における特異な位置が
説明されるのです。
だれそれの系図、どこそこの王、王妃、侯爵、男爵・・・
特に侯爵夫人オリヤーヌがどのようにエスプリがあって(皮肉で)、
社交界人としての知識と、人間関係と、趣味のセンスがあるかと、
織り込んで書かれているので、読んでいるのも少々面倒でありました。
でも“私”はすっかりゲルマント侯爵夫妻に気に入られたようです。
“私”の様子はあまりわからないのですが、ブルジョワとはいえ、
洗練されたセンスがあるのでしょうね。

そのすぐ後にシャルリュス男爵を訪ねる約束がありました。
が、ひどくご機嫌が悪く、ひねくれて、高飛車で、とにかくプライドがお高くて、
さすがの“私”も感情をむき出しにしてしまいます。
そこはシャルリュス、手練手管で自分のペースに戻してしまいます。
手ごわい男です。今のところ“私”がお気に入りのようですね。

ラストではゲルマント大公夫人からの招待を、
まじめに受け取っていいものか迷う“私”がゲルマント侯爵夫妻を訪ねています。
そこへ久しぶりに登場したスワン氏。
すっかり様子が変わっており、もう以前のような社交界での伊達男とは、
異なっていることが知れます。
その上、もう命が長くはないと医者に宣告されたと告げています。
そんなスワンをあっさりとかわして、ゲルマント侯爵夫妻は晩餐会にでかけていく、
非情なシーンです。

ゲルマント家の人々と知り合い、社交界に出入りするようになった“私”。
まだ若いので、好奇心というものが前にあるのかもしれません。
子供のころからの憧れであったゲルマントという名と人々。

あまりに現代社会と異なることもあって、
想像がついていきません。
単なる生まれの良い金持ちの暇人としか受け取れず、
それが一体人間の何の価値なのか今のところわかりません。
センスは良くても、絵画を観る眼もないし、
上流階級の人間関係だけに終始していて、
自分の生き残る位置だけを確保しようとやっきになっている人々。
お金持ちでもこんな人生は大変ですね。

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