2013年7月21日日曜日

「あのころはフリードリヒがいた」

「あのころはフリードリヒがいた」 ハンス・ペーター・リヒター著 
上田真而子訳 岩波少年文庫

すごい本を読んでしまいました。
この本が児童書に入っていることにも驚きでした。

前々から是非一読すべき児童書として、
タイトルは知っていましたが、
今回何気なくアーサー・ランサムをパスして、
読めていない本としてこの本を選んでみたのです。

字が大きいので、読むのは簡単です。
でも、内容がすごい。
凄まじい。
しばらくのんきな本を読むのに罪悪感があるでしょう。

ナチスによるユダヤ人迫害の本は数多くあります。
収容所での経験者の本もあります。
いずれも事実を後世に伝えるものとして、
大切な本たちです。
この本も「アンネの日記」と並ぶ、
児童向け図書として、今後も読まれていくことでしょう。

語り手“ぼく”の一家はごく平均的ドイツ人家庭。
常識的で、理性的でもありますが、
そういう一家が経済的なことも理由にあり、入党する。
その経緯も一つ。

そして一般の人が鬼畜へと変貌するその心理。
なぜ弱者を必要とし、弱者を迫害しようとするのか。
人間にはそのような心理が働いているのか。
それは社会において常に見られるものでもあります。
日本においても同様でしょう。
理解できない、理解したくもない、そんな事実がたくさんあります。

この本はユダヤ人の話だけではなく、
人間の在り方について考えを呼び起こす作用があります。

それに、ユダヤ人が何故迫害されるに及んだか、
その歴史についてもわかりやすく書かれています。

フリードリヒ一家に降った恐ろしい出来事は、
当時の一般のユダヤ人に行われた事実として、
嘆かわしい人間の罪として記されているのです。

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