2009年11月4日水曜日

「フィレンツェ」

「フィレンツェ」 高階秀爾著 中公新書

副題に初期ルネサンス美術の運命とあります。
15世紀ごろのフィレンツェの美術が
政治、経済、社会、思想等の影響下に
どのように発展し、衰退したのか考察しています。

フィレンツェの隆盛は、
まず、メディチ家の興隆による、
経済的発展、維持が基盤となっています。
また市民の気質にも特徴が見られます。
コンスタンティノープルの陥落により、
イスラム圏の影響もあるようです。
特に中世から大きく変化のある思想面、
ユマニスム(人文主義)の開花が
大きく影響を及ぼしていると思われます。

このユマニスムは中世的思想と、
古典的思想を結びつけるものとして
神の前にある人間の理性的存在を肯定するといった、
新しい概念だったとのことです。
これについて高階さんは非常にわかりやすく、
具体例を多く挙げて書かれています。

「春の戴冠」に登場していた人々も登場しています。
あの温厚なフィチーノ先生が、
ヨーロッパ中に知られるほどの重要な人物であったということも
ようやくわかりました。
ボッティチェルリが線描表現にこだわった理由についても
述べられています。

残念なことに、この時代は長くは続かなかったのでした。
数々の天才たちを生み出したフィレンツェが
急速に没落せざるをえなかったのは、
政治的な面だけでなく、
この街の気風にも原因があったようです。

今もその美しさを留めているフィレンツェを一度は訪ねて、
当時の栄華を偲んでみたいと思っています。

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