オースティンの6作品のうち一番最後に書かれたもので、
他の作品と比べると表現が落ち着いており、
展開も比較的ゆったりとした内容です。
主人公のアンは控えめで年齢も27歳と大人の女性です。
自分の意見をしっかり持っており、知性も教養もあり、
もちろん振る舞いも上品、冷静な判断力も備えています。
そんなアンの穏やかで落ち着いた人柄には親しみを感じられる人も
多いのではないでしょうか。
オースティンの作品のヒロイン達は才気に溢れた女性も見られますが、
最も心を通わせることができそうなアンがとても好きです。
アンには不幸なことですが、
あいかわらず滑稽な人々も顔を並べていて、
悪漢も登場します。
アンの相手のウェントワース大佐の心情が
もう一つ解りにくいのですが、
最後には明らかにされますし、
エンディングで著者による登場人物の説明が補足されていることも、
他の作品より納得が得られる仕掛けになっています。
とても暖かい心の通った思いやりを大切にした内容は
主人公のアンにふさわしいと思います。
この作品も中野さんの新訳で、
より現代的に読みやすくなっています。
これで、3パターンの訳に接したのですが、
個人的には富田彬訳の「説き伏せられて」岩波文庫が、
古風な趣きで情緒が豊かに感じられ、
落ち着いた読書が楽しめたように思われます。
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