2015年12月31日木曜日

「現代小説クロニクル1995-1999」

「現代小説クロニクル1995-1999」 講談社文芸文庫


1995年はちょうど20年前になります。
その年1月には阪神淡路大震災がおこり、
予期せぬ都市型災害に衝撃を受け、
多くの被害に心を痛めたのです。
3月にはオウム真理教による地下鉄サリン事件が引き起こされ、
一般の人々を巻き込んだテロに震撼したのでした。


もうそんなに経っているのか、と思われもします。
そんな時代に発表された短編小説とは。


「声の巣」 黒井千次
「学校ごっこ」 角田光代
「蛇を踏む」 川上弘美
「家族シネマ」 柳美里
「不軽」 古井由吉
「水滴」 目取真俊
「椿堂」 竹西寛子
「無常の世界」 阿部和重


いずれも読ませるテーマを持った作品ばかりです。
リアルな「学校ごっこ」には、同世代の人間として共感を覚え、
「声の巣」には、男性の感覚が不思議に思われ、
「蛇を踏む」は、発表時期に読んでいましたが、
今読んでも奇妙な感覚が残ります。
「家族シネマ」はその当時の家族の在り方が見え隠れしているように
思われます。
残念なことに「不軽」は全くわからず。
「無常の世界」は個人が描かれた次の世代の橋渡しとなる作品です。


個人的に印象に残ったのは、
「水滴」。
まるでガルシア=マルケスだ、と思われました。
この小説は、沖縄の歴史と実態を置き換えたものとして
読むことができるらしいことを、最近になって偶然知りました。
そういったことを含むとさらに重い作品です。


また、「椿堂」は老年の男性の心理を描いた作品で、
丁寧に静かに言葉に彫り込まれています。
竹西寛子の作品は難しいと思ってきましたが、
現代を題材にしたものであれば、私にも読めるかもしれません。


全体に眺めてみると、社会性を通して個人が透けてみえる傾向が
あるように思われます。
個人とその背景にある社会の重さが圧し掛かってきている、
時代の変わり目であったのかもしれません。

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