「とどめの一撃」 マルグリット・ユルスナール著 岩崎力訳 岩波文庫
当時の手帳を繰ってみると、
1995年に岩波文庫から出版されたこの本を入手してから、
しばらくは寝かしていたようです。
2年も経って1997年11月に読み終えたと記しています。
とても感激して、興奮していたことを覚えています。
確かに滅多にしない書き込みを随所にしてあります。
そして手帳には原書が調べられるように、
フランス語の書名がいくつか並記されています。
翻訳されているもの、未だのものなど、
今ほどネットが普及していない頃ですから、
あとがきから分かることを
せっせと調べていたことを思い出します。
その頃に入手できたユルスナールの本のうち、
「東方綺譚」と「青の物語」を続いて読み、
こちらもすっかりお気に入りとなりました。
中でも「老絵師の行方」と「呪い」がとても好きです。
「ハドリアヌス帝の回想」は難しそうで、
読めないと思い、手を出しませんでした。
また何時かじっくり読める日がくると思ったのです。
※ ※ ※
それから長い間深い眠りのような状態に入りました。
その間もずっと地下水脈のようにこの「とどめの一撃」は、
理想の小説の一つとして沈んでいたのです。
※ ※ ※
ユルスナール・セレクションが出始めて、
再びユルスナールを読むチャンスが訪れました。
まだ未読であった本を少しずつ読んでいる時にも、
常にどこかで「とどめの一撃」を意識していました。
ユルスナールの作品には共通するキーワードがいくつか見られますが、
そのうちの一つに“高貴さ”があります。
「とどめの一撃」はこの“高貴さ”がテーマといってもよいかと
常々考えています。
“高貴さ”が更に昇華して“美”となってゆくのです。
「とどめの一撃」の原型となっている話は
ユルスナールが人から聞いたものだということです。
ここにテーマとなるものを読み取り、
小説に仕立て上げる力を持っていたユルスナールへの関心も高まります。
昨年この「とどめの一撃」の親本である雪華社の単行本に
偶然出会いました。
何度目かとなる再読でも初読の時のように、
心がときめきました。
並行するように「黒の過程」、「目を見開いて」を読み、
人としてのユルスナールの姿も見えてきました。
このブログでも、ふらふらと読書している状態を
ご覧いただいていますが、
迷い、誤り、焦り、戸惑いを繰り返してきています。
納得できるようになるまで、時間がかかりましたが、
そろそろ心を決めるときのようだと感じ始めたました。
これからしばらくの間、
ユルスナールを中心とした読書に勤めたいと思います。
読書に沿った作業も計画中です。
ユルスナールの作品をより深く読み解くために。
ブログをお読みくださっている方々に、
ご協力いただいていることをお礼申し上げます。
この先もどうかご支援ください。
よろしくお願いいたします。
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