原作はジャン=ドミニク・ボビーによる同じ題名で、
実話であることは知られていると思います。
翻訳を読んだことはありませんので、
この映画で感じたことしか書くことができません。
まず、陰影の深い画面が、作品の重みを伝え、
色彩の美しさが、目に入るものたちの存在の確かさを
感じ取らせてくれます。
主人公の陥った状態をマチュー・アマルリックは忠実に
再現しているようです。
瞬き、瞬き、その目に映るもの、
その目が語るもの、
をシュナーベルは丁寧に描写していきます。
そのまわりに、主人公を理解できるように、
エピソードが取り巻かれ、
彼が一人の人間として立ち上がってきます。
今の彼に残された片方だけの視力、記憶、思考、
全てを尽くして、本は書き上げられます。
ここでは、絶望という言葉を受け止めながらも、
彼方へと飛翔する蝶のように、
現実を生きる姿がありました。
シュナーベルの目を背けない、
おそらく凄まじい製作能力を
見せられた思いです。
そして亡くなった原作者の、
生への願望もここに刻まれこんでいると
言っていいでしょう。
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