2009年9月1日火曜日

“Le scaphandre et le papillon”

「潜水服は蝶の夢を見る」 ジュリアン・シュナーベル監督

原作はジャン=ドミニク・ボビーによる同じ題名で、
実話であることは知られていると思います。
翻訳を読んだことはありませんので、
この映画で感じたことしか書くことができません。

まず、陰影の深い画面が、作品の重みを伝え、
色彩の美しさが、目に入るものたちの存在の確かさを
感じ取らせてくれます。

主人公の陥った状態をマチュー・アマルリックは忠実に
再現しているようです。

瞬き、瞬き、その目に映るもの、
その目が語るもの、
をシュナーベルは丁寧に描写していきます。

そのまわりに、主人公を理解できるように、
エピソードが取り巻かれ、
彼が一人の人間として立ち上がってきます。

今の彼に残された片方だけの視力、記憶、思考、
全てを尽くして、本は書き上げられます。

ここでは、絶望という言葉を受け止めながらも、
彼方へと飛翔する蝶のように、
現実を生きる姿がありました。

シュナーベルの目を背けない、
おそらく凄まじい製作能力を
見せられた思いです。

そして亡くなった原作者の、
生への願望もここに刻まれこんでいると
言っていいでしょう。

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