2009年9月8日火曜日

「行人」の旅

「行人」 夏目漱石著 岩波文庫

毎週土曜日、日経新聞夕刊に
文学作品にゆかりの土地を尋ねる記事が
大きく掲載されています。
基本的に日本文学なので、
日本各地を様々に巡って、
作品と作家との関係が紐解かれています。

先日は「行人」でした。
作品の前半部分の舞台となった和歌山市の南、和歌浦で、
偶然にも、しばらく前に知人と「行人」ツアーと称して
訪ねたところです。

知人が漱石を学び、好んでいることから始まったこの企画のために
何回も繰り返し、ページを繰りました。

なるべく小説のとおりに出かけることにし、
7月の下旬の暑い日に、
てくてくと歩きまわりました。
東照宮と紀三井寺以外は当時の面影は無く、
海岸の様子も漱石の描写とは程遠く、
拍子抜けするほど、落差がありました。

陽が高く、当りは真っ白な日差し、影は揺らめいていました。
当時もこんなに暑かったのでしょうか。

「行人」はこの舞台とは関係なしに、
とてもひりひりとした人間の心理を奥深く突いた作品です。
神経衰弱と一言で片付けられない、
自分のことすら見えない、
一郎の現代人にも通じる苦痛があります。

一体、自分とは何者なのか、
自分を引き受けることの困難は、
人間に与えられた宿命のように思えてなりません。

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