2014年5月10日土曜日

村上春樹訳 「フラニーとズーイ」

「フラニーとズーイ」 J.D.サリンジャー著 村上春樹訳 新潮文庫


とても読みやすく、テーマが率直にわかりやすい明快・明確な訳でした。
40代の私でさえもそう思うのですから、
若い方にはもちろん読みやすく感じられると思います。
そして、若い頃に読んで数十年・・・という方にも、うってつけです。
フラニーもゾーイーも、ミセス・グラスも姿がくっきりと浮かび上がり、
生き生きとしています。


このお話には伏線があり、
シーモアの話を知らないと、なかなかグラス家のことがわかりにくいと思います。
なので、村上氏には続いてサリンジャー訳をお願いしたいです。


それと、このお話は60年代を舞台にしているので、
古風な事柄や物、表現があちらこちらに表れていますし、
なんといってもその時代の空気というのが流れています。
この現代訳ではそのあたりが少々希薄になってしまったかな、という感があります。


でも、「フラニー」での物語の立ち上がりから、
「ズーイ」への展開、つまり内容はしっかりと伝わっています。
フラニーの苦悩は私たちにも共有できる問題ですし、
それをなんとかしようとするミセス・グラスや、
兄妹として共有できる言語で話をし、理解を促そうとするズーイの言葉も、
よくわかるかと思います。


サリンジャーが提起しているテーマ“生きるとはどういうことか”は、
誰しもが通る道だと思うのですが、
若い人に説得力を持つのはサリンジャーが今のところふさわしいと思っています。


懐かしさの中にも新鮮味を感じた読書となりました。
 

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