2014年5月25日日曜日

「セラピスト」

「セラピスト」 最相葉月著 新潮社


この本は5年を費やされて書かれたノンフィクションです。
最相葉月さんの本を読むのは初めてです。
ノンフィクション作家として名高い最相さんの渾身の作だと思われます。


いや、最相さんはいつもこのように綿密に取材と文献資料にあたられて
すべてを注ぎ込んで書かれる方なのでしょう。


この本では、カウンセリングの入口となる要素がほぼ語られています。
最相さんが精神科医として名高い中井久夫さんに絵画療法を受ける実体験を
間に挟みながら、
故河合隼雄さんを通じて知られる箱庭療法の実際を紹介、
東洋英和女学院大学大学院での修士課程における臨床心理士の学習体験、
日本のカウンセリングの歴史、
日本に箱庭療法が導入されるようになった状況、
中井久夫さんと河合隼雄さんとのかかわり、
新たな診療基準の導入、
現代の精神科、心理カウンセリングの特徴、
それにくわえ、最相さんの精神科受診とその経過が、
適切な表現をもって、じっくりと書き込んであります。


心の病、精神の病を持った方、その関係にある方が、
素人でも基本的なことを知ることができます。


ただ、読むには相当なエネルギーを要します。
人の心、精神は脳がつかさどっているとはいえ、
その深さを言葉で表現することの難しさ。


そして現代に特徴的だとされる対象等があいまいな、
漠然とした心の不安定さに対処することの困難さ。


セラピスト、カウンセラーの教育分野は盛況だそうですが、
その道の険しさはいうまでもないでしょう。


私自身、精神科にかかり、投薬を受けていますから、
自分はどのように治療を受けていくのがよいだろうかと
常に考えています。
また、会社でもうつ病になった人、
精神的にまいっている、と訴える人が周りにいます。
的確に必要な投薬を受け、
カウンセリングを受けることができれば、
少しでも楽になり、通常の生活に戻り、
人間らしく生きていけると思うのですが、
どこから手をつければいいのかわからない、というのが現状でしょう。
そのためにも、グループ単位、会社単位で、
メンタル面をサポートできるカウンセラーが必要なのではないでしょうか。


この本を読む前には、読むことによって明らかにされるだろうその世界を、
期待を持って捉えたいと思っていましたが、
そのような簡単な事態ではないことを思い知らされたような気がします。

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