2014年9月16日火曜日

「須賀敦子の方へ」



「須賀敦子の方へ」 松山巌著 新潮社


この本は新潮社の「考える人」に連載されていたものです。
から、もうすでにお読みの方も多いことでしょう。


著者の松山巌さんは、
生前の須賀さんと親しくされており、
没後に編集された全集では詳細な年譜を作成された方です。


その松山さんがどのように須賀さんを描くか、
とても関心がありました。


この本では、一章につき、一つのテーマを置き、
テーマに沿いながら、須賀さんの姿を追い、
場所を訪ね、交遊のあった人の話を聞き、
実際に須賀さんが書いた文章を読みほどいていく、
という手の込んだ手法をとられています。


実際に須賀さんが松山さんに話されされた言葉も含まれて、
須賀さんの姿が少しずつ見えてきます。


幼少の頃、戦時中の苦労、戦後の生き方、
残された数冊の本と妹である良子さんの話にも後押しされて、
様子を知ることができます。


圧巻は洗礼を受けられた18歳のころからの章でしょう。
学校でのこと、寄宿舎でのこと、家族のこと、
そしてこれからやっていくべきこと、を
細かく読み込んでおられます。
とても多感な時期のことを、須賀さんは熱っぽくもさらりと過去のこととして、
書かれていますが、自分の根っこを作るとても大切な時期であったことを
承知されていたのでしょう。


そして、あまりあきらかにされていなかったカトリックの人々との関わりについて、
松山さんは丁寧に調べていらっしゃいます。
この大学院へ行くまでの一年と、大学院へいってからの半年、
須賀さん自身はどのように考えていたかはあまり多く語られてはいません。
少し垣間見える部分から、松山さんは色々と推測をされています。


たとえば、サン=テグジュペリやヴェイユをいつごろ読まれたのか、
不思議に思っていました。その影響はとてもはかりしれないものだったと思います。


今になってわかるのは、須賀さんの基本はこのあたりで形成されているということです。
自分のことだけでなく、社会情勢を踏まえて、文学、信仰についてを学んでいきたい、
そのように感じます。


そしてフランス留学を決められます。


この本ではこのフランス留学を決めるまでをひとつのくくりとしています。
もちろん、その後の須賀さんがどのように考え、行動していたか、
どのように感じていたのか、
著作と照らし合わせて、知りたいことがたくさんあります。
松山さんと一緒に歩いて、考えてみたい。
松山さん、道案内をよろしくお願いいたします。

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